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ヒンズーの奇祭「タイプーサム」を見てきたよ - 前編

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「Thaipusam / தைப்பூசம் / タイプーサム」はインド南部出身のタミル人の祭り。ヒンズー教の軍神「Murgan / Skanda / スカンダ」を敬う「スカンダ信仰」の象徴的な祭りで、インド以外でもタミル人が多く移民したシンガポール、マレーシアで開催されています。そしてこの祭りの起源は、魔物「Asura / 阿修羅」の1人である「Soorapdman」を軍神である「Murgan / Skanda / スカンダ / 韋駄天」が槍を使って倒した逸話にあります。(阿修羅だの、韋駄天だの、巡り巡って日本でも聞いたことのある名称につながる辺り、インド文化の奥深さを感じずにいられません)
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祭りでは、人々は頭を剃り(頭に塗っている黄色い色素は「日焼け止め」だそう。急に露出した頭皮を守るのですね)、軍神スカンダにならった姿で自分のカラダに串を刺したり、「Kavadi / カヴァディ」と呼ばれる重しを身につけたり、苦行を行いながら神へ祈りを捧げ、願掛けをし、信仰の行進をします。シンガポールの場合リトル・インディアにある「Sri Srinivasa Perumal Temple / スリ・スリニヴァサ・ペルマル寺院」を出発し、およそ4.5kmの道のりを歩き「Sri Thendayuthapani Temple / スリ・タンダユタパニ寺院」を目指すルートが一般的です。

<ミルクを抱える>
今回の記事の1枚目の写真はこの行進のうち、1番多くの人が行う「ミルク」を抱えて歩くというもの。老若男女誰でも比較的簡単に取り組めるとあって、特に女性や子ども巡礼者が目立ちます。多くの場合、キレイな装飾を施した銅の壺にミルクを入れ、頭上高い位置で抱えます。痛くないから楽そうに見えるけれど、これを4.5kmの距離ずっと高い位置で掲げるのはそれなりに辛いはず。
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子どもの略式なケースでは、紙パックに入った牛乳を持って歩いている姿も見かけました。現代風で合理的。これもいいと思うな。足元はみな裸足です。

<カヴァディ 肩に乗せるタイプ>
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カヴァディには大きく2種類あります。1つ目は半円型をした重荷を肩に乗せて歩くタイプ。木製の枠の真ん中には額に入った神の肖像、そして周りは孔雀の羽と、色とりどりの装飾、というのが一般的です。重量は分かりませんが、10kg以上はあるのではないでしょうか。この人は直に肩に乗せていますが、人によってはクッションのようなもので衝撃を抑えている人も。カラダへの負荷が大きければ大きいほど、神への祈り、忠誠心の強さがあるとみなされるようです。
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形は違いますが、重い柱のようなカヴァディを背負うタイプもあります。
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男性ばかりではなく、女性もカヴァディを背負って行進する姿も散見されました。




<カヴァディ 串刺しタイプ>
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タイプーサムを象徴すると私が思うのはこちらの、カラダに串が刺さったタイプのカヴァディの人。金属で出来た丈夫だけれどその分重そうなベースに、孔雀の羽や、金属で出来た五重塔やその他華やかで重そうな装飾がついたもの一式を、なんと、自身のカラダに串を刺して固定しているというもの。

どうやら串でこれらの重量の全てを支えているわけでは無いようですが(腰のベルト参照)、だからといってカラダに刺さった串が痛そうなことには変わりがないし、歩くときの振動で常にカラダへの刺激があることでしょう。(でも、中には腰ベルトを使わない強者もいるとか!)
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巡礼者には通常、家族や仲間たちが周りについていて一緒に彼らを励ましながら行進します。この写真のピンクの服を着た女性は終始祈りの歌のようなものを歌い続けていました。そして、隣には見切れしまっているけれど、太鼓を叩く男性。この2人がリズムを作り、景気付けすることで彼を鼓舞し、最後まで歩き通せるように支えるのです。

カヴァディを背負っている人にはとても話しかけられなかったけれど、一緒にいた仲間の人に聞いたところでは、串刺しタイプのカヴァディは軽く40-50kg程の重さがあるそう。その重みを腰と、串で受け止めるんだから…。(涙)

<舌の串刺し>
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カヴァディを背負うだけでなく、彼らの多くはまだ他にも苦行を行っていました。それは頬と舌に串を刺すこと。この写真の男性は恐らく、頬に1本ズブッと串が右から左へと突き抜けていて、その先端にはここでは見えないけれどライムが刺さっています。刺すのが痛いだけでなく、ライムの重みも苦しいことでしょう。ここから更に、突き出した舌に上から下へ貫通するように串を刺している人も多く、どちらかと言えばそちらのほうが一般的です。
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この行為は軍神スカンダの姿にならったもので、舌や頬に串をさしてしゃべることが出来なくすることで、より忍耐を要する苦行が行えるという意味があります。写真の女性は行進を終えたあと、串をまず抜くではなく、このままの姿でスマホを操っていました…。OMG。

<剣山サンダル>
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これはもう、その名の通りのもの。釘先が足の裏にくるように打ち付けられて作られたサンダルを履いて歩く苦行。この人は歩くスピードが遅くて、足が悪いのかな…と思ったところ、こんなサンダルを履いていたのでした。とても目立たないけれど、確実に苦しい。そしてこの男性はかなり重量がありそうだった…。
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剣山サンダルにはかなりの強者がいました。この男性、足元がとんでもなかった。
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このサンダルの釘の間隔の広さと言ったら…!! 目を疑う程のもの。前出のサンダルに比べたら、雲泥の差。いくら体がスリムだと言っても、忍耐強い人だと言っても、これは想像を絶するものです。
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他のカヴァディを背負ってる人達と比べても圧倒的に苦しそうで(皆さん想像よりも苦しそうじゃないでしょう? その事はまた別途書きます)、見ている方も辛く、本当に気の毒になってしまいました。でもね、彼には強力な支えがいました。
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息子さんと一緒に彼は歩いているんですよね。どういう事情で参加したのか分かりませんが、息子さんの手前、お父さんは苦しくても気丈に振舞っていました。サンダルの釘の本数の少なさには自分でも後悔していたんじゃないかと思うけれど、息子さんの前では頑張っている。あぁ。かっこいいお父さん。

<背中の皮で山車を引く>
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これでほとんどすべてのタイプの苦行を網羅することになります。背中の皮で山車を引く人達。写真の左にいる男性に注目を。頬に串が刺さっているだけでなく、背中に赤いヒモをたくさんつけているのが分かるでしょうか。そして、そのヒモを束ねて持つ後続の男性、その後ろには山車(祭壇)。
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背中の方に回ってみてみると…こういうことになっています。背中の皮に太い釣り針のようなフックを無数に付けて、それで山車を引っ張っている…。この写真ではヒモを後ろで支える人もいて、「実はそんなに負荷がかかっていないんじゃないの??」と思う人もいるかもしれませんね。(そう思い始めている時点で、かなりタイプーサムの苦行に目が慣れたということよ)
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この前のめりになった人を見ても同じことを思いますか? この背中の皮の引きつれ具合ったら! この時は信号待ちで前に進めず足踏み状態だったのだけど、そんな時ぐらいカラダを休めてあげてもいいのに、この人は自分に鞭打つ。
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そして表情はこの通り、観覧者のことなど目にはいらない。じっと耐えているからなのか、神のことを考えているからなのか、こちらの予想をはるかに超えた落ち着きです。どうしてこんなことが可能なの?? 誰しもそう思うはず。

というわけで、後編ではその辺りのことについても書いてみたいと思います。続く。

by hanatomo31 | 2015-02-09 16:50 | シンガポールSingapore

座右の銘は「空腹は最高の調味料」 欲しいのは「食べても食べても太らない、魔法のカラダ」


by ハナトモ